ETIENNE PERRONE

NIGHT PHOTOGRAPHY


Dreams Happen After Dark
物語だけが失われた映画。エティエンヌ・ペロンヌの写真は、そんな映画の一場面のようだ。夜の街を歩きながら、現実がより濃密に、より奇妙に、まるで虚構のように姿を変えていく、その瞬間を追い求める。光がものの見え方を変えると、世界はふいに目に映る以上の何かを秘めているように感じられる。今しがた起きたことの余韻と、これから起こることへの予感。その狭間に漂う、かすかな気配。一つ一つの情景は宙に浮かぶように静止し、柔らかさと緊張感が交錯する中に、目に見えない物語が息づいている。そこに人の姿はない。それでも、あらゆるものが誰かの痕跡をとどめているかのようだ。
アーティスト・ノート ↓





アーティスト・ノート
子どもの頃、私は頭の中でいくつもの世界を思い描きながら眠りについていた。列車の中、待合室、退屈な夜に、私の心は現実には存在しない人生へと漂っていった。今もそれは変わらない。
私の中には、ある種のもどかしさがある。人生はもっと濃密なものであるはずなのに、いつも何かの一歩手前にいるような感覚。一人で旅をし、言葉の通じない街を夜に歩く。それが、その何かに近づくために私が見つけた、最も確かな方法だ。
そこでの私は、フランスで日常を送る映像作家としての自分ではなくなる。人通りが消え、街が静まると、ほんの小さなものが圧倒的な存在感を帯びてくる。ネオンのうなり、エアコン、水滴、自分の足音。外の世界へ向けて意識が極限まで研ぎ澄まされていく。それなのに、かつてないほど深く自分の内側へ入り込んでいく。
それは、机に向かう作家に少し似ている。身体は部屋にありながら、心はすでに物語の中にいる。私は街を歩きながら、その先へ通じる道を探している。そして時折、ほんの数秒、別の人生にかすかに触れたような感覚になる。どこか向こう側で生きている、もう一人の自分の人生に。
おそらく、私があらゆる創作の中で探し求めているのは、人生がふいに大きく開ける、まるで啓示のような鮮烈な瞬間なのだ。一枚一枚の写真には、そうした瞬間が刻まれている。
もはや、これが単なる芸術活動なのか、自分でもわからない。それは今や私の生き方であり、世界の見つめ方になった。


略歴
写真家、映像作家、撮影監督、音楽家 ・ マルセイユ(フランス)
リヨンの映画学校ARFISで学び、2000年より映像作家・撮影監督として活動。企業や公的機関向けの映像制作と、個人の作品制作という二つの活動を並行して続け、両者は互いに影響を与え合っている。
撮影監督としての経験はフレーミングと光への感覚を支え、映像作家としての経験は物語や感情、独自の世界観を探求する姿勢につながっている。映像、音楽、写真にわたる個人作品において、その感性はひとつの探求へと向かう。空気感や音、質感までも感じられるほど濃密な体験へ、観る者を引き込むことだ。
実験映画『Gloom // Bloom』(2019年)は複数の国際映画祭で選出、受賞。Doppelhandel名義で作曲も行う。1999年から続ける写真は、現在、個人作品の中心を占めている。
シリーズ「Dreams Happen After Dark」は、2025年LensCulture Street Photography AwardsでJuror's Pickに選ばれ、英紙『The Guardian』に掲載された。2026年には、同シリーズがLensCulture Street Photography AwardsおよびロンドンのAOP Open Awardのファイナリストに選出されている。




エティエンヌ・ペロンヌ — 写真

Etienne PERRONE
マルセイユ(フランス)
シリーズの他の作品です。全作品を収録したポートフォリオは、ご希望に応じてお送りします。





































